藤田貴大 オンライン演劇プロジェクト
日本と東南アジア3カ国との協働作品
-フィリピン、タイ、ベトナム-
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国際交流基金バンコク日本文化センターは、日本の現代演劇界を代表する藤田貴大氏(マームとジプシー)とのオンライン演劇プロジェクトとして、藤田氏の脚本・演出による日本と東南アジア3カ国―フィリピン、タイ、ベトナムーそれぞれの国との協働作品を制作し、公開しました。
各国の俳優・アーティストが住んでいる地域、お気に入りの場所、生い立ちや家族・日常・食事、そのシーンではどのような風景が伴っていたかをふまえながらインタビューを実施。その場所にまつわるそれぞれの記憶から、ZOOM上で一つの街とそこに流れる時間が描き出されています。
本プロジェクトでは、まず2021年3月にフィリピンの俳優らとの協働作品『TAHANAN(タハナン)』を発表。続いて、2022年2・3月にタイ・ベトナム各国8名、計16名(と2匹の猫)の俳優・パフォーマー・アーティストとインタビューを実施し、映像作品『流れと舟(=Lai & Thuyen)』を制作しました。それぞれ単独の作品としても成立させつつ、連作になるような構成となっています。
『流れと舟』Lai and Thuyen
“流れ=Lai”がタイ語、“舟= Thuyen”がベトナム語です。2カ国とも、人々の生活や歴史が水と共にある国であり、また時間の流れや人の記憶など無形のものからイメージを得てタイトルをつけました。
藤田貴大FUJITA Takahiro (演劇作家、監督)
1985年4月生まれ。北海道伊達市出身。桜美林大学文学部総合文化学科にて演劇を専攻。2007年に「マームとジプシー」を旗揚げ。作品ごとにキャストとスタッフを集め、公演を行っている。全作品の作・演出を担当し、横浜を中心に演劇作品を発表。2008年3月に発表した『ほろほろ』を契機に、いくつもの異なったシーンを複雑に交差させながら、同時進行で描く手法へと変化。作品を象徴するシーンの“リフレイン”を、複数の別の角度から見せる映画的手法を創作の特徴とし、そこから生まれる俳優の身体の変化も劇作に活かしている。また、俳優が持つパーソナリティーを観察し、劇中の人物と擦り合わせることで生まれるリアルさや、多様な演技の質感を作品に大きく反映させている。
タイにおいては共催団体BIPAMとともに役者のセレクションを行い、次のように幅広い地域・年代・経験をもつ魅力的なアーティストたちと共にこの作品を創ることができました。
テンモー/バンコク、ロサンゼルス
Mo Rodvanich
“米国カリフォルニア州を拠点に活動し、反響を呼んでいる女優。しっかりとした演技力があり、役者としてとても頼もしい存在です。タイのスタンダップ・コメディアンとしても注目されています。普段は国外にいる彼女を、タイでの本プロジェクトに迎えられたことは大変喜ばしいことでした”
ガンディー/ ナコンパトム
Gandhi Wasuvitchayagit
“タイ演劇界で少し謎めいた存在感を示すアーティスト。神秘的な魅力を纏いつつ、時にはシニカルなキャラクターも見せます。作曲など音楽家としても素晴らしい活躍ぶりです。新しいことに挑戦する姿勢は、彼の音楽や演劇の作品にも反映されており、その豊かな経験を本プロジェクトにも活かしてくれるという期待に応えてくれました”
エンウーイ /バンコク
Prapamonton Eiamchan
“タイのインディペンデント映画界の新星。出演作品は高い評価を集めており、彼女の繊細かつ切れのある演技が見どころです。舞台演劇は始めたばかりですが、今後の活躍を応援したい役者です”
リュウ/コンケン
Pongsatorn Phutthakhot
“BIPAM2019 で作品を発表したアーティストの一人。新しいことへの挑戦を恐れず、豊かな表現力を持つ新世代のアーティストです。本プロジェクトを機に、タイの演劇界において、バンコク圏外から存在感を見せつけることを期待します”
ナサリー/バンコク
Nasree Labaideeman
“セレクションにあたり最初に名前が出た役者の一人。バンコク演劇界から愛される役者であり、敬虔なイスラム教コミュニティのメンバーでもあります。異文化間のアイデンティティについて考察し、真面目な努力家でもあるため、役者仲間から厚い信頼を集めています”
トム/チェンマイ
Sutarath Sinnong
“普段は人形劇団(パペットシアター)の人形使い。マカンポム劇団で演劇指導も受けています。理想の家で暮らす夢を抱き、チェンマイ郊外で、4〜5年かけ一人でゼロから住まいを作りあげています。現在、その家で、人形制作や公演などをしながら(そして庭いじり、パン作りなどもしながら)生活しています”
アーイ/チェンマイ
Prapassorn Konmuang
“チェンマイ出身の新進気鋭の若手アーティスト。大胆な表現がアーティストとしての魅力を引き立てます。生まれも育ちもバンコクではない彼女の存在により、本プロジェクトの脚本やパフォーマンスに興味深い視点が加わりました”
タッガデーン/カンチャナブリ
Wasu Wanrayangkoon
“パントマイム、フィジカルシアター、そして、対話劇などの多種多様な演劇で活躍する、魅力的かつ多才なパフォーマー。人生、社会、そして、政治についても深い思考をもつ役者として、本プロジェクトで存在感を放ちました”
脚本アドバイザー Script Advisor
チュアン/バンコク、ベルギー
Jaturachai Srichanwanpen
“タイの演劇の創り手。現実と演劇の不思議な要素の間を行き来する彼の作品は、様々なタイプの人間関係の細部を探求することでより大きな社会の実情を映し出します。オリジナル・翻案、両方の作品の実績があります。バンコク大学コミュニケーション学部広告学科卒業後、シンガポールのラサール芸術大学の芸術文化経営学科にて修士号を取得。近年は、演劇人によるアートスタジオ「Sliding Elbow Studio」の共同設立者として運営に参加するとともに、非常勤講師として脚本執筆を教え、またフリーランスの俳優としても活動しています”
BIPAM(Bangkok International Performing Arts Meeting)について
2016年より東南アジアの舞台芸術のネットワーキングイベント及びプラットフォームとして設立され、現在はイベント実施に限らず舞台芸術のマネジメント組織として幅広く活動している。バンコクを拠点としながら、東南アジアの舞台芸術が世界に羽ばたくための「発射台」となることを目指す。豊かな東南アジアの舞台芸術を国際舞台につなげる活動をするとともに、東南アジアを包括する広い視野を持って地域の課題や人材育成、国際機関とのコラボレーション事業を積極的に行っている。
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The Japan Foundation, Bangkok
10th Fl. Serm-mit Tower, 159 Sukhumvit 21, Bangkok 10110
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