国際交流基金アジアセンターは、MAIIAM現代美術館、ジム・トンプソン・アートセンターとの共催のもと、「呼吸する地図たち」をタイのチェンマイとバンコクで開催します。
アジアにおける近代は西洋との交渉の過程と重なり、日本の近代化も、多くの地域が植民地化された東南アジアと内実は異なりますが、その例外ではありません。特に近代化の象徴的産物としての「地図」は、西洋の影響においてアジアの「国民」の創生、文化、経済、社会の変容を表出し、近代社会特有の空間概念や共同体意識を生み出す視覚的装置として機能してきました。タイの歴史学者であるトンチャイ・ウィニッチャックンは、近代地理学の所産である「地図」によって、近代国家としてのタイの空間概念、共同体意識(国民意識)が形成されてきたと指摘し、その概念を「地理的身体(geo-body)」と称しています。
本事業では、「地図」によって規定されてきた「地理的身体」を静的なものとして捉えるのではなく、「地図」と「地図」の間にある、さまざまな時層での社会の変容を読み解きつつ、人間のアクチュアルな身体的活動の集積から形づくられる「生きた地理的身体」を探求するものです。
今回タイのチェンマイでの実施は、2018年度に山口情報芸術センター[YCAM]で実施された事業のエッセンスを再構成し「響きあうアジア2019」の一環として実施した東京芸術劇場版に続き、いよいよ本事業を考える上で根幹にある「地理的身体」を提唱したトンチャイ・ウィニッチャックンの出身国であるタイにおいて最終形を実施するものです。
これまで島嶼部を中心に考えてきた東南アジアの国民国家形成と近代化ですが、大陸部の文化要素を加えさらに多様な考察を可能にし、ヴァージョンアップしたレクチャー、パフォーマンス、シンポジウムとして展開していきます。
○ スケジュール
1月25日(土曜日) 会場:MAIIAM現代美術館
13時:[オープニング特別ツアー]
クリッティヤー・カーウィーウォン「San Kamphaeng 101:特別な寺院・食べ物・工芸・スタジオツアー」
※席に限りがあります。ご参加を希望の方は、booking_acd@ba.jpf.go.jp にてお申込みください。
※当日、昼食代200THBをいただきます。
19時:[レクチャー・パフォーマンス]
チャーンウィット・カセシリ「帝国の酒杯と私」
(演出:カゲ・ティーラワット・ムンウィライ、ノンタワット・ナムベーンジャポン、アナン・クルットペット)
1月26日(日曜日) 会場:MAIIAM現代美術館
(モデレーター:シン・スワンナキット)
14時:[トーク]
タナウィ・チョーパラウィット「地図、追悼、記念碑」
15時:[トーク]
小原真史「内国勧業博覧会における『人間の展示』」
1月27日(月曜日) 会場:MAIIAM現代美術館
19時:[レクチャー・パフォーマンス]
イルワン・アーメット&ティタ・サリナ「ネーム・ロンダリング」
1月28日(火曜日) 会場:The Wandering Moon Theatre & Thepsiri Art House
18時:[トーク&ドリンク]
神里雄大「不思議な出会い:アユタヤと泡盛」
20時:[レクチャー・パフォーマンス]
モンタティップ・スクソパ「影の世界」
1月29日(水曜日) 会場:MAIIAM現代美術館
19時:[レクチャー・パフォーマンス]
ホー・ルイアン「アジア・ザ・アンミラキュラス」
1月30日(木曜日) 会場:MAIIAM現代美術館
19時:[レクチャー]
ホー・ツーニェン「東南アジアのクリティカル・ディクショナリー」
2月1日(土曜日) 会場:Ayara Hall, Jim Thompson House
14時~17時:[シンポジウム]
「地理的身体と忘却のはざまに」
トンチャイ・ウィニッチャクン、イルワン・アーメット、ティタ・サリナ、井高久美子、マーク・テ