2021年6月14日付にて、当センター所長の吉岡憲彦に帰任の辞令がおり、7月上旬に日本へ帰国することとなりました。以下、吉岡からの離任のご挨拶とともに、お知らせ申し上げます。
お世話になった皆様へ
2016年4月に着任して以来、5年2か月のあいだ、日本・タイ両国の皆様と国際文化交流を通じて人生の苦楽をともにできたことをとても嬉しく思っています。まさに「激動」と呼ぶにふさわしい時代と時代精神を皆様とバンコクで共有できたことは、わたしにとってかけがえのない経験で、これから長いあいだ、どこで暮らしていても、「生きた」感覚として噛みしめることになるだろうと思います。
コロナ禍のなか日本へ帰国しなければならないことは、正直、残念ですが、少なくともオンライン上では、いつでもどこでも誰とでも会えると改めて確認できたことは、離任が必ずしも「今生の別れ」につながらないという意味で、今の時代ならではの、ひとつの励みであり希望でもあると感じています。
一方で同時に、コロナ以降の一年間は、映画や演劇やダンスや音楽を肩が触れ合いそうな距離で一緒に観ること聴くこと、アートを場の空気感を含めて体験すること、また、外国語をともに学ぶことやグループで議論・研究することなど、人と直接会うことや「場」を複数の身体で共有することの大切さを改めて痛切に感じる日々でもありました。
ヴァーチャルな世界に生きることができる時代の便利さには感謝しつつも、老いて自由がきかなくなるばかりの身体をもつこと、それを皆様のもとにさらしながら、「場」や「体験」を直接共有すること、つまりは人間らしく生きることを忘れずに、次のステップに進みたいと思います。
これまで、直接・間接に、オンライン・オフラインでお世話になった皆様、長い間、本当にありがとうございました。これからも末永く、国際交流基金バンコク日本文化センターのスタッフ一同への愛のあるご指導・ご鞭撻、そして施設・サービスのご愛顧をよろしくお願い申し上げます。
2021年6月
バンコク日本文化センター所長